むかし、”ぼかし肥料”は何処の農家でも作っていましたが、化学肥料の発明で手間のかかるぼかし肥料はほとんど作らなくなりました。しかし最近では有機栽培等に欠かせない肥料として見直されています。
ぼかし肥料は油かすや米ぬかなどの有機質に山土やモミガラなどを混ぜて発酵させた肥料です。土などで肥料分を薄め、さらに発酵させて肥効ぼかすところからぼかし肥料と呼ばれています。一般には、有機質肥料は化学肥料に比べると分解速度が遅く、遅効性の肥料と言われていますが、ぼかし肥料は有機質をいろいろな割合で配合して成分を調整して、ある程度発酵させます。有機態の窒素成分を一部はアンモニアや硝酸に無機化させていて、遅効性と速効性の両者のよいところを併せ持った肥料といえます。
原料選び
ぼかし肥料の原料としてよく使われる有機質肥料は下の表です。窒素の多いものとリン酸が多いものを組み合わせることが基本となります。窒素は油粕類を中心に、リン酸は骨粉を中心に組み合わせることが多いようです。米ぬかには各種の成分がバランスよく含まれていて、微生物の繁殖を促進する効果に優れているため、多くの微生物資材で培養用の副資材として使用されています。ぼかし肥料でも発酵促進用としてよく使用されます。一方、有機質肥料にはカリはあまり含まれていないので、不足分は草木灰や硫酸カリを使い補います。
ぼかし肥料の原料の有機肥料の成分(3要素) | |||
肥料名 | 窒素 | 燐酸 | 加理 |
菜種油かす | 5~5.5 | 2 | 1 |
大豆油かす | 7~7.2 | 1~1.3 | 1~2 |
魚かす | 7~8 | 4~6 | 1 |
肉骨粉 | 6~7 | 6~11 | 微量 |
生骨粉 | 3~5 | 16~22 | 微量 |
米ぬか | 2~2.6 | 4~6 | 1~1.2 |
乾燥鶏糞 | 3~4.5 | 2.5~6 | 1.5~3 |
土を混ぜる
ぼかし肥料はただ有機質を発酵させた肥料ではなく、有機質肥料とほぼ同量の山土や粘土資材などを加えて作ります。
土には肥料成分を保持する働きがあります。有機質が発酵時に出す匂いはアンモニアガスによるものが主体です。そのままでは窒素分が揮散してしまいますが土がアンモニア(窒素)を吸着してくれます。したがって、利用する土は、CECが高く保肥力の強いものが適しています。また、土壌に含まれる微生物は発酵の種菌になります。
その他の資材
ベントナイト
CECが高く(50〜100me)、ケイ酸を含んでいて、水を吸って膨張する性質があります。
ゼオライト
沸石を含む凝灰岩、CEC(100me 以上)はベントナイトよりさらに大きい
。また、ゼオライトで土の20〜30%を代替することで孔隙が増え、好気発酵が促進されます。また、脱臭効果にも優れています。
バーミキュライト
ひる石を高温で焼成したもので、通気性や保肥力の改善効果に優れています。
場所と被いの仕方
積み込む場所は屋内が良いのですが、適当な場所がなくて屋外で作る場合は、雨に当たらないようにビニールシート等で覆うと良いでしょう。屋内で作る場合は、コモやムシロなどでおおいをして乾燥を防ぎ、通気性を確保してください。積み込みは各材料を薄い層にして何層にも積み重ね、切り崩しながら水をかけてまんべんなく混ぜ合わせます。
水分状態と発酵温度
発酵時の水分はぼかし肥作成の重要なポイントとなります。水分が多すぎると温度が上がらず嫌気的な発酵になり、腐った状態になり悪臭が発生します。一方、水分が少なすぎると急速に高温となり、アンモニアが揮散して窒素が減少してしまいす。理想的な水分状態は50〜55%で、大まかな目安として、握ると固まり指で軽くつつくとほぐれる程度の状態が良いでしょう。
発酵温度は水分が少ないほど、また土の割合が少ないほど上がりやすいくなります。切り返しの目安は表面から深さ10cmの温度が50〜55℃になったときとすると良いでしょう。これ以上の高温になるとアンモニアの揮散が多くなります。夏季で1昼夜、冬季で3昼夜ぐらいおくと50℃前後になるので最初の切り返しを行います。切り返すといったん温度が下がりますが、再び発酵により上昇します。これを3〜5回行って発酵完了とします。発酵を止めるには薄く広げて乾燥させます。
基本的な”ぼかし肥料”の混ぜ合わせ例
油かす20kg 鶏糞10kg 魚粉10kg 骨粉10kg 米糠3kg
を層に薄く重ね水を加えながら山土40kgとゼオライト10kgを混ぜた土とよく混ぜます。水分は50~55%に調整します。
温度が50℃になったら切り返しを行い、これを3~5回繰り返します。(55℃以上にならないように注意する。)
切り返しを終えたら薄く広げて乾燥させ、発酵を止めて袋に入れて保存します。