聞いて集めた昔の話 第35回

オキノ桜

(平成19年7月)

 今月は花咲栗生の「オキノ桜」についてのおはなしです。
 オキノ桜は栗生の戸丸 保さん宅の脇を150m程山裾に入った戸丸貞夫(故人)旧宅の脇に、推定樹齢100年、樹高約12mと伝えられている山桜の木はありました。
 「オキノ桜」の云われは昭和初期の頃に、戸丸キノさんと云う人が現在の貞夫宅裏に大きな萱葺きの家で旅館を営み、背峰峠を越えて針山の観音様をお参りに来る人達を相手に宿泊業を行なっていたそうです。
 オキノさんは信仰心が高く、「伏見稲荷大明神」の分身を受けて来て、旅館脇の山裾に社を造り祭り、その前に山桜の苗木を植えたのが始まりだそうです。その後に主木が一度枯れたが、その周りに数本の新芽が出てきて、現在では大小9本の幹が残っており、年輪を重ねるごとに毎年4月下旬から5月上旬には色鮮やかな花が咲くようになったそうです。
 お社の中には、大きな稲荷さまが2体と直径80cmほどの太鼓がありました。
 この山桜は最近までは、まったく無名で地元の人もあまり感心もなかったが、数年前に針山の天王桜が新聞やテレビなどで照会されて有名になり、栗生にもきれいな山桜あると地元の人がPRしたので、花の見ごろには大勢の見物客が来るようになり、周辺には駐車場も整備されていました。
 昔は養蚕をする人達が養蚕の豊作を祈願するために、背峰峠を越えて針山の観音様へ祈願に来た人がオキノさんの旅館に泊まり、翌朝に故白倉泰十郎さん宅の裏を通り、鹿野朝治の「鱒池」の脇を登り山越えで針山の観音様の鳥居の下に抜ける道があったそうですが、自動車の普及に伴い道路が整備されたり、養蚕の衰退によって、現在では通る人も無く道跡も分かりませんでした。

 

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