聞いて集めた昔の話 第29回

針山部落のつめっこ祭り

(平成18年12月号)

針山部落には、昔から「つめっこ祭り」と云うめずらしい行事が行われており、現在でも引き継がれておりました。
祭日は、毎年旧暦の9月28日で(今年は11月18日)に行われましたが、祭神には「十二様」がなっているそうで、「十二様」は千明俊和宅脇の農道を約200m程入った杉林の中に祀ってありました。
 昔の祭りは「十二様」が祀ってある杉林の下に少し平らな場所があり、祭りの前日から村人が人足で丸太で柱と屋根の骨組みを造り、山から萱を刈って来て屋根を葺いたり廻りの囲いをして、祭りの場所を作ったそうです。この様な「小屋造り」は第二次世界大戦が始まった、昭和18年頃まで行われたそうで、その後は祭り当番を決めて、その当番の家で毎年「つめっこ祭り」をして来ましたが、部落に集会施設が出来てからは集会所で行うようになったと永井文男さんは話してくれました。
 この「つめっこ祭り」の当日は甘酒を造る当番と赤飯を造る当番の二人がいて、「甘酒と赤飯」を作って夕方に「十二様」に供えてからお参りに来た人達に振舞い、夜は祭り小屋に男の人が集まって「つめっこ」(砂糖つめっこ)を造って酒を飲みながら「つめっこ」を食べる習慣になっているが、初めてこの「つめっこ祭り」に招待した人達には、奇怪な形「男根(男)と女陰(女)」をした大きな「つめっこ」をどんぶりで振舞うそうで、これは家族の繁栄と家系の継続を十二様(夫婦の神様)に祈願して続けられていると伝承されて来たそうです。
 取材に伺ったとき、今年は5名の招待者がおり、奇怪な形の「つめっこ」が振舞われていました。招待者の中には今年から針山の住民になり参加した永井勝巳さんも、大きくて奇怪な形の「つめっこ」にびっくりしながらも先輩に励まされながら挑戦しておりました。
 このお祭りの準備はすべて男の人が行い、「つめっこ」は小麦粉からねって造り、「しるこ」の味付けもみんなで行い、出来た「つめっこ」を招待者に振舞った後に参加者は酒を飲み、「つめっこ」を食べながら夜の更けるまで語り明かすそうです。女の人はこの「つめっこ祭り」には参加出来ないため、「甘酒当番」の家に集まって「甘酒」をご馳走になりながら世間話しをして過ごすそうです。また、この「つめっこ祭り」には、十三才以上の女性は出席できない決まりになっており、これは十二様(山神)の1人が女神様ということで、女性が参加したその女性に対して嫉妬をしない様にするために出席を出来ない様にしたとも伝承されているそうです。今年の「つめっこ祭り」には針山部落の人が9名が参加して行われましたが、民宿に来ていて参加した3人の招待者は「奇祭」についての話を聞きながら、大きな「つめっこ」を食べておりました。
 この様に伝統ある奇祭「つめっこ祭り」をいつまでも続けて行きたいと、横坂新一組長をはじめ参加者は話をしてくれました。取材に対して大変ご協力を頂きまして誠に有難う御座いました。

 

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