聞いて集めた昔の話 第27回

栃久保の天狗様

(平成18年10月)

 栃久保部落の東側にある天狗山の山頂にある「天狗の宮」(火災除けの神様で通称天狗様と云っている)は、文化5年(西暦1808年)ころに祭られたと伝えられており、およそ200年近くが経過しているそうです。
 ご神体は「からす天狗」と伝承されているが、社の中にはご神体は無く「木札」だけがありました。お社には文化5年に地元の氏子戸丸富衛門勝重(現在の戸主は戸丸久世氏)と云う人の奉納した「鰐口」が有りました。毎年、お祭りに配られるお札にはキツネに乗った「からす天狗」が印刷されていて、その原版は山崎の法称寺(ほうしょうじ)星野 直宅に保管されており、お祭りにはそれを借りてお札の印刷をするそうです。
 昔の祭りは1月15日に行われて、祭り当日は「天狗様」にお参りした後に部落内の大きな民家を借りて「演芸会」が開催されて多くの若い衆が「踊りや芝居」などを披露して、部落の人を始め近隣の部落からも大勢の見物客が来て昭和30年代の中頃まで大変賑やかだったそうです。
 民宿経営をする家が多くなる等の社会環境の変化と、1月は雪が多くて天狗山へのお参りが大変のため祭日が4月10日に変更されて、現在でも天狗様にお参りに来た人達には「お神酒、赤飯や菓子」などをくれて続けられているそうです。
 天狗様へお参りする道は戸丸正三郎宅(現在戸主、戸丸志郎氏)の脇からおよそ300m位急な坂道を登って行くと、山頂に天狗様は祭って有りました。天狗山には三ツ神様が手前から「天王様」「金毘羅大権現」「天狗の宮」の順に祭ってあり、昔はそれぞれの神様のお祭りには参拝する人で大変賑やかだったそうです。
 また、山頂には樹齢200年を超える赤松の巨木が多くあり、永い歴史の後が感じられました。三ツのお社は伊勢湾台風のときに暴風雨で破損したので、部落の人や近隣部落の人達による寄付金等でそれぞれが新築されたそうです。 その時にお社周辺の樹木が切り払われて、頂上からの眺望が大変良くて、北の方面は武尊山から尾瀬の山々が、南には花咲の田園風景や赤城の原が望めたそうですが、現在では樹木が伸びて見晴らしが悪くなったと案内をしてくれた佐藤武二さんは話してくれました。
 昔、娯楽の少なかった時代には、この様なお祭りは賑やかに行われて多くの人達に親しまれたが、社会環境の変化と観光産業の発展と共に、永い間 地域の人に親しまれた伝統行事が年を重ねるごとに、忘れられて行くのが淋しいと佐藤萬三郎さんと佐藤武二さんは話をしてくれました。ご協力を頂きまして誠に有難う御座いました。

 

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